テキストサイズ

恋してキスして抱きしめて

第14章 友人の言葉

「ユーリ。
似合わねぇから、その辺でやめとけ」


「……は?」


「どんなに冷たい男を演じても

無理だよ、おまえには」


「………!」


「多分、朱莉も気付いてる」




……時々、この男はこういう表情をするんだ。


普段は優しさなんて絶対に見せないくせに


自分に近い誰かの、秘めていた恋愛話になると


言葉では言い表せないほどの、切ない笑みを浮かべる。




「……朱莉の肩を持つ気なんてねーし

別れた原因は、当然お前らにしか分からないけど」




………東京タワーを背にした、フラットなステージ上で


ジャズの生演奏が始まり、フロアの客から歓声が上がる。



「悩んで、決めて、それがその当時最良の答えだったとしても

人間である以上、後悔することだってある」




ピアノの旋律に乗せて

ヒメの声が、心の奥へと響き渡った。




「ユーリ、朱莉だって苦しいんだよ」


「…………っ」


「誰もが皆、悩むんだ。

苦しさから逃れる為に

……救いを、求めたくなる時もある」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ