手探りな絶望
第9章 衝撃
「おい、藤沢っ!」
翌朝
冬実のことが
気になりながら
俺は会社に出勤していた
試験室に行く前に
とりあえず
派遣の別棟に行って
冬実の顔を見たい
そんなことを
思いながら
駐車場に車を停め
冬実の車を
探していると
大きな声で
俺を呼ぶ
柴田さんがいた
「あっ、柴田さん
おはようございます!
昨日は、ごちそうさ…」
「そんなこといいから
ちょっとこっちこい」
いつになく
真剣な表情の柴田さんに
腕を引っ張られ
俺は建物の陰に移動した
「ど、どーかしたんすか?」
「お前…
彼女ってのは
派遣の女だったのか?」
「えっ…」
俺は
派遣の立場の冬実に頼まれ
冬実と付き合ってることは
会社の中では内緒にしていた
「そーなんだな?!」
「あ…はい…
すみません黙ってて…
でも
別に問題ないっすよね?
派遣だからって別に…」
「派遣かどーかなんて
どーでもいいんだよ
いいから、これ見ろっ」
柴田さんは
作業服のポケットから
しわくちゃになった
一枚の紙を取り出した
そこには
殴り書きのような文字で
こう書かれていた
妊娠したら
手切れ金を渡して
子供を堕ろさせるような
卑劣なF・Sさんを
私は許せません
派遣社員・佐々木