手探りな絶望
第16章 別離
助手席に座っても
冬実は
俺と目を合わせる事はなく
うつむき
黙ったまんま。
分かるよ…冬実
俺だってそう。
冬実に
あんなに会いたかったのに
あんなに
冬実を抱きしめたかったのに
触れることも
できず
何から
どう話せばいいのかも
全く
分からないまま
静かな時間だけが
流れている
でも
このままじゃ
ダメなんだ
伝えたいことは
伝えないと。
俺は
心の中で
そう決意し
涙を拭うために
眼鏡を外した冬実に
優しく
できるだけ
穏やかな声で
話かけた
「怒ってないよ、冬実
だから
安心して
俺の話を聞いてくれないか
そして
俺を
許して欲しいんだ」