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手探りな絶望

第3章 接近

「え?

待ってたの?

ここで??」



寒空の下
待ってた?
二時間も?



「は、はい…」


「中に入ってくれば良かったのに」


「私…」


「うん」


「試験課さんの
お名前聞くの忘れてしまって…

だから
なんて言っていいか
分からなくて

お仕事中に
迷惑かもしれないと思って…」


佐々木さんの声は
だんだん小さくなり
うつむきはじめた


「あ、あ、そーだよね
俺も名前言うの
忘れててさ

ごめんごめん
寒かったよね
大丈夫?」




「大丈夫です

試験課さん
あの、これ
ありがとうございました」



佐々木さんは
ちょっと
可愛らしい封筒を
俺に差し出した


多分
中は二万円



「うん
じゃ、遠慮なく
こんなに待たせて悪かったね

俺の名前は
藤沢って言うんだ

もう

試験課さんって
呼ばないでね(笑)」



「あっ…はい(笑)」



ギャップ?



ギャップに
ヤられたのか?



それとも
やっぱり
あの日何があったのか
知りたいだけ?



分からない


なんにも
分からねーけど


俺は佐々木さんに
興味が湧いて仕方なかった


だから


つい


言ってしまったんだ




「待たせちゃって
佐々木さんが
風邪でもひいたら
申し訳ないからさ

良かったら
飯、行かない?

グラタンの美味しい店
知ってるんだ

俺、おごるよ


これで。」



と、佐々木さんに
返してもらった
可愛らしい封筒を見せた

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