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金曜日の午後

第1章 セピア色

自分の背中で君への気持ちを届けたい。




背中で男を見せるんだって、そう思っていた。
でも、遠回りばかりで僕の気持ちは1%も伝わっちゃいない。




そうだよね、女の子の気持ちを少しもわかっちゃいない僕はそういうことに慣れちゃいないのかもしれない。



でもね、伝えたいんだ。







好きだって気持ちを。

君のことでいっぱいになってしまって、もう冷静でいられない張り裂けそうな僕の気持ちを!







もう遠回りはやめだ。

不器用な僕にはストレートに気持ちを伝えるしかないんだ。




もう小手先の手段なんかない。まっすぐ正面向いて行こうじゃあないか。






放課後。
きれいな夕日の放課後。


まだらに並ぶ細長い雲がより空を立体的に映すよ。
君の瞳のようだ。




君は来た。
僕は背中を向けている。
君は僕の背中を見つめてる。





さあ正面を向こう!
ちゃんと目を見て伝えるんだ。
悔いのないように。






怖がりで臆病だった僕は振り向き、目を開いて叫んだ。
君を見て叫んだ。

「ずっと好きだった!つ、付き合ってくれ!」





「…突き合ってくれ?」
そうつぶやくと同時に君は目線を下に向けたね。
何か醜いものを見て軽蔑するかのような目で。




その目線の先には情熱の行き場を間違えた僕の6インチが、制服のズボンから浮き立っていた。
しっとりとした汗をかいて。



君は同じままの目でもう一度僕の顔を見たね。

「サイテー!」って言われるかと思ったよ。







でも君は何も言わずに去って行ったね。
一言もない方が何百倍もつらかったのに。




そんな金曜日の午後。





さて、おでんでも買って帰るか。

悲しもうが強がろうがまた明日も僕という人生に変わりはない。









今日であの日からちょうど10年です。
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