叶わぬ恋でも君のために。
第11章 君のこと。
「…うん…。」
彩さんのことだよね…。
「拓実から、彩のこと…聞いてるんだよね?
彩のこと…聞きたい?」
彩…
秀ちゃんの口から彩さんの名前を聞くことが
こんなにも胸を締め付けるなんて。
聞きたいけど聞きたくない。
聞きたくないけど…
前に進むために
聞きたい。
コクっと私が頷くと
君は切ない表情で話し出した。
「この前、眞子ちゃんと旅行に行った街に
子どもの頃、住んでたって話したけど…
彩もあの街に住んでたんだ…。」
君が私と思い出を作った場所には
既に君の胸に深く刻み込まれている
大切な思い出があったんだ…。
「俗に言う幼なじみってやつで…子どもの頃は彩と、俺と拓実の三人で仲良く遊んでた。
だけど、俺達が中学の時、こっちに引っ越してからはずっと会ってなかったんだ。」