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叶わぬ恋でも君のために。

第8章 君の嘘

一瞬…違う人が言ったのかと思った。




“俺”、なんて…


初めて君の口から聞いたから。



「ねぇ、眞子ちゃん…。

なんで?なんで俺のためだなんて言う訳?


俺が…親父に決められた婚約者と結婚して
なりたくもない親父の後を継ぐことが

どうして俺のためになるの?」





「そ、それは…。」


秀ちゃんが自分で婚約者と結婚するって言ったから…。



「眞子ちゃんって…出世とお金のために、この仕事引き受けたんだよね?


それって、自分のためじゃん。」



「…。」



「好きでもない男に抱かれるのも出世とお金のためなんだろ?」



「ち、違う!それは違うよっ!」



「違う?何が?

俺のためとか言って、俺の気持ちなんかちっとも知らない癖に…。」




何で急に君がこんなに怒っているのかわからなくて


頭の整理がつかなくて


上手く言葉が出てこない。






「ひどいよ…秀…ちゃん…。」






私がそう言うと


君は我に返ったようなハッとした表情をして
部屋を出て行ってしまった。

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