テキストサイズ

第1章 彼




白衣を着た
監察医が到着し


警察官と共に
検察官達が
丁重なお辞儀を
交わす


十数分後
監察医は
僕の顔も見ず


第一発見者として
事情を聞いてきた
警察官達も


僕の方へは
声を掛ける事なく


彼の身内である
老夫婦の元へ
監察医を追い
階段を下りて行った



数分後
誰もいなくなった
彼の部屋へ


まるで
観光旅行者のように


老夫婦を囲み
職場の方々が
彼を悼む会話を
語りながら


階段を昇ってきた


手配した葬儀社が
彼の遺体を
取りに来るようで


彼の部屋の前に
群れをなし
陣取る
老夫婦達を


通路の隅に寄り
眺めていた僕は


“帰ります”と
声を掛け


彼が所持していた
部屋の鍵を手渡し
階段を下りた


ストーリーメニュー

TOPTOPへ