
「俺は、男だ!クソ野郎」
第9章 うん。はい断る
「翼、探しましたよ。一体どこに、いってらっしゃった…ん?」
俺をチラッと見た。
「あ、あなたはあの時の!?」
突然やって来て俺を見た瞬間、
驚いた表情を見せる顔の整ったハーフ野郎。
…この顔はよく覚えてる。
嫌な思い出と共に。
「あはは…ども」
どうリアクションしたらいいの。
なぜ、このタイミングであの時、
咲さんの美容室で会った副会長と会うんだよ。
しかも、あの時は
完全女装したし、今も同様で女装してる。
つまり、この人は
俺を間違いなく女だと思い込んでいる。
廊下の窓から吹く風が全身に沁みて
急に寒気がしてきた。
おかげ、
ウィッグ付きのウサ耳が取れねぇ。
「え、なに知り合い?」
翼先輩は、俺と副会長を交互に見る。
…お前、気づいてねぇのかよ。
あん時、少し絡まれたって話したじゃねぇか。
チッ。
ここはもうしょうがねぇ。
最終手段と言うべく
「ちょ、姫!?」
俺は翼先輩の腕を掴み、走り出した。
生憎、こいつが俺のこと『姫』と呼んでくれて有り難い。
だって、咲さんが副会長に教えた名前も『姫』だったから
ひとまず怪しまれずに済んだ。
今は、とにかく全力疾走。
50m7秒台舐めんなああああああああうらあああ。
