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秘密の恋。

第9章 それぞれの想い

木村は社用車の荷物を取りだし、整理を始めた。ゴミをまとめて捨て、減ってきた資材を補充する。
(あ…そろそろ発注が必要だな…)
木村は事務所に入り、自分の席へ戻りながら寺嶋に声をかけた。
「寺嶋さん、発注用紙…ある?」
「あっ、はい♪」
寺嶋はすぐにファイルから資材注文用の用紙を出し、席まで持って来てくれた。
「ありがとう」
「いえいえ♪」
「…。」
普段は用紙を渡したらすぐに席へ戻る友香だったが何故か今日は戻らずにずっと傍らに立っている。
「…寺嶋さん?」
「あっ、なんか仕事ほとんど片付いちゃって、ちょっと今ヒマで」
ニコニコしながら木村のすぐ横に立っている。あまり警戒心などは無さそうだ。
(ちくしょー。彼氏いるくせに気のある素振りなんか見せやがって!期待しちまうじゃねーか!)

…気のある素振りも何も、本当に“気がある”んだからある意味仕方ない。友香は、そういう思いを隠すのは下手なのである。逆に気のない相手に気のある素振りをして“男を自分のいいように利用する”なんて芸当も出来ない。
良くも悪くも素直で真っ直ぐなのだ。

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