テキストサイズ

秘密の恋。

第11章 木村家。

父は既に他界、妹も県外へと嫁いでいって、バツイチ独身の木村は70代の母親と二人暮らしだった。
「ただいま~」
「あれまぁ、一真(かずま)じゃないか!帰ってくんなら電話ぐらい入れな、このバカ息子!アンタの飯、ないよ?…あたしゃこれから出かけんだからね」
「どこへ?」
「さくらの会の仲間と観劇!そのあと食事もして帰るから…あぁ、ちょうど良かった。バスで出かけるつもりだったんだけどね、どうせ帰って来たんなら劇場近くまで車で送っておくれ」
「…人使い荒いな。俺、長距離移動して帰って来たばかりなんだけど?」
「どうせフェリーん中じゃ寝てんだから、そんなに疲れてないだろ」
図星過ぎて言葉を失う。いくつになっても母親には勝てない。仕方なく木村は母親を劇場まで送ることにした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ