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秘密の恋。

第2章 営業vs事務

電話の相手は、本社の課長からで、何か困ったりしていないか、様子確認の電話だった。
友香は、業務的には何の問題もないが、営業マンが高圧的で怖かったという話をした。

「そうですかぁ。うちの営業さんはね、飛び込み営業だし、基本給無しの完全歩合制だからね、ちょっと癖の強い人が多いんですよ~。だから、うちの事務員はね、おばちゃんって言うか、ちょっと人生経験豊富で、いろいろくぐり抜けて来たような人の方が向いててね…寺嶋さんはまだ若いから、その辺がちょっとしんどいかも知れませんね」
(…なんで私、採用されたんだろ…)
「まぁ、他の営業所と違って本社が車で10分と比較的近いからね…何かあればすぐ応援にかけつけられるし、そこなら若い子でも勤まるかなと思いましてね。だから、些細なことでも何でも相談して下さいね。もしどうしても辛かったら、本社の事務員に配置替えも出来るから…」
(はっは~ん。募集かけたけど、なかなか思うようなおばちゃん事務員が応募しなかったから苦肉の策で私が採用されたんだな…)
課長からのアドバイス(?)は「相撲部屋の女将さん」になったつもりで営業所を切り盛りするつもりでいてくれ、だった。
(相撲部屋なんて入ったことないし、知らないよー)焦る友香に、もう1つ、助け船として、隣県の営業所の事務員さんに話を通してくれ、困ったり不安なことがあったら電話での相談が出来るように手配してくれた。
そこの事務員さんは、その会社の全営業所の中でも二番目に事務員歴の長いベテランさんだった。しかも、プライベートでは結婚、離婚、再婚を経験し、子ども3人のうち、1人は自分の連れ子、もう1人は夫の連れ子、3人目が、現在の夫との間に出来た子、というなかなかに複雑な家庭環境をものともせず円満にまとめている凄腕の肝っ玉母ちゃんだった。
課長との電話をきってから30分とたたないうちにまた電話が鳴り、今度はその事務員さんだった。営業員あしらいのコツや会社の裏話などいろんな話をした最後、
「あと半年ぐらいしたら毎年恒例の全営業所合同の社員旅行があるから頑張って!そこで会おうね!友香ちゃん!」
そういって電話が切れた。

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