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顧みすれば

第9章 日常

――???こんなに褒めてきて、目的はいったいなんだ?

なんてことはおくびにも出さず


「こちらこそ、よろしくお願いします。設計や製造、現場あっての三住製作所ですから
私の仕事なんて皆さんの足元にも及びません。
私のほうこそ今回現場を知るいい機会をいただいたと思っていますから。」


「なるほどねえ。会社の主軸をきちんと押さえながら相手を褒める。
こういうことかあ。」


――そんな分析ができちゃうこと自体、できる人ですよ石田さん。


「石田さんは海外のプロジェクトは何度もやられているんですか?」

「大きなものは今回で2回目。5年前にベトナムのプロジェクトに参加したんだ」

「ああ。発電所の」

「そう。今回も発電所も提案するそうで前回の経験を生かしたいと思ってるんだ」

「海外勤務も長かったんですか?」

「前回は半々だったかな」


私たちは社食につくまでずっと話をしていた。

後ろにいた松田君が何か言いたそうな顔だったが
特に会話に入ってくるわけでもないので
気に留めることはしなかった。

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