顧みすれば
第10章 急接近
もう、ドキドキさせられっぱなし。
こんなはずじゃなかったんだけど
すっかり常務のペースにのせられている。
大きな拍手が沸き起こり
ステージではフラメンコのショーが始まった
店内が静まり返り
フラメンコギター
踵と手を打ち鳴らす音が静かに響きはじめた
顔を心持ち挙げて
凛とした表情でダンサーは踊る
興味のない男には振り向きもしない
でも愛した男には焼き尽くすほどの
愛を傾ける
情熱的な踊りだ
私はすっかり魅了され
ダンサーに釘付けになった
情熱的だったリズムは
やがて静かにテンポを落としていった
割れんばかりの拍手が沸き起こる
私も夢中で手を叩いていた
ダンサーがステージを降りてこちらに近づいてくる
常務の手を取りステージへと促している
頑なに断っていた常務だったが
根負けしたように
ジャケットを脱いでステージへとあがっていった