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顧みすれば

第12章 砂漠の檻

そして、とうとう見つかってしまった。

なるべく会場の端で目立たないようにしていたつもりだったが

山下常務がロイド王子と見られる男性と一緒に近づいてきた。

常務はにこやかに話しているが

目が明らかに怒っている


「佐々木さん、ロイド王子が挨拶してほしいと」

私はロイド王子に向き直り
深く一礼した。

「はじめまして。佐々木亜美と申します。
 日本の三住製作所に勤めております。

 この度山下商事と一緒にプラント建設のプレゼンテーションの機会を頂き誠に光栄に思っております。

 当社の技術は必ずやアラブの発展に寄与できると信じております。
 是非日本の技術をアラブの国民の皆様のためにお使いくださいませ」

ロイド王子が目を丸くする

「とてもきれいなQueen'sだ

 英語はどちらで?」

「ケンブリッジに2年ほどおりました」

「ケンブリッジか。なるほどね」

手を差し出し私の手を乗せるように促された。
私が手を差し出すと甲にキスされた。私は少し膝を曲げて挨拶を受けた。

「英国流には英国流で返さねばな」

ロイド王子が山下常務を見た。

にこやかに笑う常務の目はやっぱり怒っていた。

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