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顧みすれば

第12章 砂漠の檻

最上階のスイートルーム

大きく深呼吸して呼び鈴を鳴らす。


しばらくしても扉があかない。

ドアノブを回すと扉が開いた。


広い広いスイートルーム。


ルームランプだけを灯した薄暗い部屋の窓辺で
山下常務はグラスを傾けていた。


「常務」

私の声に顔だけ向ける。

私を見つめたまま何も言わない。

私は常務のそばまで歩み寄った。


「佐々木さん、俺は今どうしようもないほど
 どうかしてるよ」

静かに発せられた声が広い室内に吸い込まれていく。


「俺はあみって女を探していたはずだった。
 なのに、同じ名前の亜美がどんどん俺の中で存在が大きくなってるんだ。

 君の手に触れるたび

 君の唇に触れるたび

 亜美はあみなんじゃないかって

 そんな思いがどんどん強くなって

 どうしようもなく君がほしくなるんだ」


私は何も言わず黙って聞いていた。



「なぁ、もういいだろう。
 本当のことをいってくれ」






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