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顧みすれば

第13章 HERO

父は母を母国へ返し
私を城へ呼び戻した。

私はそこで初めて父が嘆き悲しむ姿を見た。父は母を未だに愛していたのだ。
毎夜私を呼び寄せ、私を膝に抱き泣きながら酒を飲んでいた。
母が恋しいと泣く父の姿は
いつもの強い王ではなかった。


私は父に母に愛していると伝えてほしいと何度も願い出た。

しかし父は虚ろな目をして
「私が平民であればそうするだろう。
 しかし、私は王としてこの国を守り導いて行かねばならぬ存在。たとえどんなに愛する人でもこの国の行く末が傾くようなことは出来ないのだ。たとえ彼女に恨まれようとね。

 王とは孤独だよ。

 ロイド王子は耐えて行けるかね」

悲しく微笑みながら私に語ってくれた。


王とは誰もが羨むばかりの存在だと思っていたのに。
愛している人に愛していると伝えられない孤独な人なのかと初めて覚った。

父も母もお互いをとても愛しているのに
その立場が普通の愛を貫けない
悲しいものだとは知らなかった。

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