テキストサイズ

顧みすれば

第16章 始末

事件から数日後

宰相の先祖の墓地の片隅に

バドル元王子がひっそりと葬られた。


王子であれば人目を憚るような墓に入れられることもなかろうに。

しかしバドルの悪行を考えれば仕方のないことであった。



宰相は高く澄み渡った空を見上げた。


大空には1羽の鷲が悠々と翼を広げ飛んでいた


宰相は悲運の王子を思った。

同じ王の子であっても王妃の子と妃の子では扱いに雲泥の差があった。

王の子でありながら妃の子は王とはほとんど会うことも叶わず臣下の外祖父の屋敷で育ち兄弟たちにも礼を尽くさねばならない。ほとんどは18歳になると王族から外され臣下として生きる。

バドルはその性癖から生母にも疎まれ、幼い王子の愛を求める姿はますます変質し常軌を逸脱していった。


人は死んでしまうとその人のよい面を思い出そうとするものらしい。

1度は宰相に欲を張らせてくれたこともある王子の幼き日の姿を思い出し
宰相は長い時間墓前に佇んでいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ