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顧みすれば

第17章 それぞれの愛

病室の扉を開ける

「直哉 来ていたのか」

直哉は彼女の手を握ったまま振り向いた。


「ああ、彼女を見舞うことがいま俺が唯一できることだから」

「そうか」

私は直哉と反対の椅子に腰を掛け

彼女の手を握った。


沈黙が病室を包む


「なあ、ロイド

 彼女のどこにそんなに惹かれた?」


私は初めて彼女を見た時を思い出していた


「初めて見たとき

 とても寂しい目をした女だと思った。


 なのにとても惹き付けるんだ

 その感情のない目が


 本当に一目惚れってやつだ」


私は少し恥ずかしくなった。


「一目惚れか」

「そういう直哉はどうなんだ?

 相当惚れてると見えるぞ」

直哉は一瞬躊躇した。

暫くじっと彼女の顔を見つめていた。

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