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顧みすれば

第19章 実力者たち

女性は頑として子宮摘出には応じなかった。


王は仕方なし


思い足取りでドクターのもとへ向かった。


遠くでドクターが驚いた声をあげ


こちらへ走ってくる音が聞こえた。


ものすごい勢いで扉が開いた。


「お母さん!娘さんの命がかかっているんですよ!いま摘出すれば命の危険は避けられます」


女性はドクターに歩みより深く頭を下げた。


「ドクターには感謝いたします。

 でもこれは娘の生きる根源に関わるのです

 たとえ命が助かっても自分の体につけられた悲しい傷は決して消えることはない。

 それにきっと彼女の精神が耐えられなくなるでしょう。

 この先愛する人に出逢えたとして

 そんな体で愛する人に身を委ねられましょうか。自分の体を晒せましょうか。

 愛する人の子供を身ごもれない自分を

 ずっと責め続けてしまうのです。

 どんな理由にせよ自分を追い詰めるでしょう

 これ以上娘を苦しめることはしたくありません」

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