テキストサイズ

顧みすれば

第21章 彼女の秘密

うちはもともと将軍家の御殿医でした。


つまり、王の専属の医師というところでしょうか。


わたしの祖母は早くに夫を亡くしまして、
徳川家で乳母をしていたんです。

そして、乳母をやめるときに支度金といって退職金をもらって銀座に茶屋を開きました。


もとは芸者衆に三味線や踊りを教えていたんですが、きっと商才のある人だったのでしょう。
茶屋を開いて芸者衆の元締めみたいなことをやっていました。

その店が卯月といいます。

茶屋とは言っても、もともと徳川家の乳母をしていた人ですから、政財界に知り合いも多く普通の茶屋とは一線を画していたようです。

小さい店を逆手にとって、一見さんお断りを始めたのも祖母が最初です。
決して他のお客様と顔を会わせないような工夫もしていたと聞きました。
なので自然と客層も限られ、卯月を利用できること事態が政財界のステイタスと言っていただけるようになったとか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ