テキストサイズ

顧みすれば

第23章 傷つけあう 心

「さ、私は帰りましょう」


女将がくるりと背中を向けた。


「紗英ちゃんが目覚めるのを待たないのか?」


女将は振り向き微笑んだ。


「私は何も知りません」


「え?!」


「案外その方がうまくいくもんなんですよ。


 それに、紗英は幸せです。


 あの子は誠一郎さんのお陰で

 家族の温かみを知っていますから」


「彩月」


「サハド王、もうしばらく娘がご厄介になりますがよろしくお願いします」


女将は深く丁寧に頭を下げた。


「それはもちろん」


王は深く頷いた。


「では、お父さん娘をちゃんと日本へ連れて帰ってきて下さいな」


誠一郎はドキリとした。

「そうだな。

 紗英ちゃんは私の大事な娘だからな」


「彩月、その約束果たせぬかもしれん」


王が意地悪な目で言った。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ