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顧みすれば

第25章 愛のかたち

「まもなく私は身籠った。


 サエ 後宮は怖いところよ。


 今まで私のことなど見向きもしなかった

 大臣たちが次々とご機嫌伺いに

 やって来るようになったの。


 王妃たちもやってきては

 珍しい食べ物だからと

 目の前で食べさせられたりしたわ。


 命の危機は一度や二度ではなかった。


 私はただ愛する人の子を産む

 その幸せだけを感じていたかったのに


 王妃という立場はそんな普通の幸せに

 浸ることは出来なかった」


マリアンヌさんは冷たくなり始めた手を擦った


「妊娠してからどんどん痩せて

 精神的にも不安定になっていく私を

 心配した王は今まで以上に私のそばにいてくれた。

 それがまた他の王妃たちの目に障り

 ますます陰湿な苛めとなった」

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