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顧みすれば

第25章 愛のかたち

「サエ、病室に送っていくわ」


そういって車イスを押してくれた。


「でもね、

 私がどうしても叶わない相手がいるの」


私の頭上から少し寂しげな声がした。


「貴女の母、サツキさん」



「え?!」


私はマリアンヌさんの顔を見上げた。


「見てしまったことがあるの。

 サハド王が机の引き出しに

 大事にしまってある写真を見ながら


 愛しそうに微笑んでいる顔を。


 あんな素敵な笑顔見たことなかった」


私は何と答えていいかわからなかった。


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