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顧みすれば

第29章 失われた時を

「なに被害者面してんだよ!

 テメェーが加害者じゃねーか!」


ガシャンガシャンといろんなものが転がる音


「あの子は10年苦しんでるんだ。

 わかるか?」


直哉さんの声は聞こえない。


「俺は社長に頼まれて

 あの子をずっと見てきた。


 守ることも

 救うことも出来なかったけど


 あの子の捌け口にはなれたよ」


道にへたりこんでいる直哉さんの胸ぐらを掴む


「テメェーはどうなんだ?

 いつまでも逃げてばっかりじゃねーか!


 だからアラブの王子に持ってかれんだ」


掴んでいた胸ぐらを勢いよく離し

直哉さんは道に倒れた。

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