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顧みすれば

第30章 決意

社長は机で書類に目を通していたが


私が入室すると立ち上がって迎えてくれた。


「今回は大変だったね。


 いろいろと辛い目に遭わせてしまって

 
 申し訳なかった」



社長が頭を下げた。


「いえ、承諾したのは私ですから


 社長に謝っていただくことなど


 なにもございません」


社長は私にソファーに座るように促してくれた。


「しかしね、

 君にアラブへ行くように指示したのは

 会社だ。

 社員を危険な目に遭わせてまで

 やらなきゃならん仕事などない。


 アラブのプラント建設からは

 手を引こうと思う」


社長は沈痛な面持ちだった。


「そのことでお願いがあります」


「お願い?」


私は意を決して社長を見つめた。

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