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顧みすれば

第31章 旅立ち


「直哉さん、

 ずっとこんなキスをしてほしかった。


 あの時に


 こんなキスをしてくれていたら‥‥‥。





 最後にやさしいキスをありがとう



 またいつか。



 さようなら」



私の目から零れ落ちた涙を拭いながら


直哉さんが私を見つめる。



「紗英


 紗英の体には俺の血が流れている。



 もう傷つけたりしない。



 どこにいても 


 ずっと 紗英を 守るよ」



私は微笑みながら頷いた。



直哉さんに背を向けて歩き出す。




もう、直哉さんは追ってこなかった。




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