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カーン、カーン、カーン……
静まった街に、午前三時を告げる鐘が鳴る。
鳥も寝静まっているのか、いつも騒がしいカラスの鳴き声さえも聞こえない。
私はハンガーからマントをとると、体にまとった。
鮮やかなクランベリー色のマントは私のお気に入りだ。
「さて、行きますか」
そう言って、ドアに手をかけて開く。
高いヒールの音が地面に響く。誰もいない路地は不気味なダンジョンのようだ。
しかし、そんな路地にも月の明かりは光を当てる。
私はマントのフードを深くかぶった。
「太陽は働き者ね、月まで照らす必要などないと思うんだけど」
ヒリヒリと微かに痛む肌を軽く撫で、私はさらに足を進める。今日は、五日ぶりの食事をとりに外に出たのだ。
もたもたしてる暇はない。
私はつんのめるようにして、ひたすら歩く。
さっさとしないと憎らしい太陽が出てしまうのだ。
すると、そのとき……
ドカンッ！
なにか固いものに私の身体は吹っ飛ばされた。
突然の出来事に、私は地面に叩きつけられて頭を思い切りぶつけた。
「いっ…！」
頭に走る激痛に、私は身体を丸めた。
……こんなとこに、何かあったかしら…
私はゆっくりと頭を上げた。
そこには、一人の男性がいた。
長い金髪が月の光でキラキラ輝いている。
「大丈夫？」
私と目が合うと、彼は私に手を差し伸べた。
「あ、ど、どうも……」
私は遠慮なくそれにつかまる。