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君だったから。

第4章 わからないよ…

約束の時間になった。

約束の場所で、30分も前にきて、ずっと待った。

そして、時間の10分前。

拓真は来た。

シンプルなジーパンに黒のパーカーという、いたってふつうの格好だが、拓真のスラっとした体型からはモデルを想像できた。

「早いね。そんなに楽しみだったの?」

「そんなんじゃない。ただ…」

好き

その2文字だけが言いたいのに…

言えない。

恥ずかしいんじゃない。

怖いわけでもない。

胸の高鳴りは止まらなくて、ドキドキして…

「ただ、何?」

そのときは今なんだ…!!!

「私、拓真が好き…っ!」

言った。

言えた。

そのことだけが嬉しくて、たまらなかった。

そのとき拓真の優しい腕が私を包み込んだ。

そして、耳元でそっと

「そんなこと、ずっと前から知ってる」

と言われた。

拓真の心臓の高鳴りがこんなに近くで聴けるのが嬉しかった。

「拓真は…?私のこと好き…?」

私は不安で、聞くことしかできなかった。

すると、拓真は

「わかんない」

と答えた。

「好きか嫌いかって聞かれたら、絶対好きっていう。でも、人生の中で1番好きかって言われるとまだ1番じゃない。」

なら、私のやることは1つ。

「なら、拓真の人生の1番になってみせる。」

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