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さくら

第1章 1

桜の下には死体が埋まっている…と言っていたのは誰だろう。

本当に死体なんてないのはわかっているけど、そんな気がする時がある。

桜の下の死体…。

時々そんな想像をしてみる。

大きな桜の木。

その根元に埋められ朽ちていく体。

体の養分は木に吸われ腐敗した肉体は虫の餌になる。

誰にも気づかれず時間だけが過ぎていく。

やがて肉は骨となり、役にたつこともない。

木の根に侵されるのみ。

そんな情景が頭に浮かぶ。

気がつくと僕は笑みを浮かべている。

想像によって朽ちていく肉体は僕。

それを見ているのも僕。
僕は僕を見ている。

他人のことのように。
花びらが風に煽られ空を舞う。

僕の上にも。

地中の僕の上にも。

そして花びらに覆われていく。

ピンクや白に覆われた体は醜さを隠され無にかえる。

想像の中で。

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