病み✕つき
第1章 プロローグ
「…泣いてんの?」
それは予想もしないほど突然で
一瞬の出来事。
「どした?」
「……っ、あっ、えっと…。」
泣いているあたしに、彼は優しく話しかけてくれた。
「なにがあったか知らないけど、元気出せよ」
泣いて上手く話せないあたしに、彼はポケットから取り出した飴を差し出した。
「特別な!」
そう言って屈託なく笑った彼の髪の毛を夕方の風が揺らした。
綺麗…
そう思った。
お礼も言えないうちに走り去ってしまった彼の背中はオレンジ色の光に染まっていた。
その日から、彼はあたしの"特別"になったーー…"