病み✕つき
第3章 距離
ーーーー…
走りついたのは昨日天野君と準備した木工室。
生徒は皆体育館に集まっていて校舎には誰もいなくていた。
「はぁ…」
何やってんだろあたし…
せっかく天野君と一緒にいられる、最後のチャンスだったのに…
今日でほんとに最後なのに…
「…江藤っ!!」
「…ぇ?」
振り向いた先にいたのは、天野君。
走って追いかけてきてくれたみたい。
息が上がっている。
嬉しくて、堪えていた涙が一気に溢れた。
「…っ!ごめん…!」
心配そうな顔であたしのそばに駆け寄り、顔を覗き込む天野君。
天野君はいつだって優しい。
それなのにあたし、まだ天野君に何も伝えられてないよ…
「さっきの…気に触ったよな?
ほんとごめん…あいつらにも言っとくから…」
「ちがっ…違う…全然大丈夫…っ」
「大丈夫じゃないじゃん、ごめん江藤」
天野君の長い指があたしの頬の涙を拭った。
違う、違うよ…
あたし、天野君が好き…
天野君が好きだから、ずっとずっと好きだったから…
ぎゅっ…
涙を拭ってくれた天野君の指をぎゅっと掴んだ。
「あたし、天野君のことが好きです…っ」
「…え」
「ずっとずっと前から…天野君は覚えてないかもしれないけど、中学の時、始めて話した時から、ずっと天野君が好きだった…」
ずっとずっと言いたかったこと
見てるだけでいいなんて嘘
ほんとはずっとずっと気付いてほしかった
あたしを見て欲しかった
でも、どうしよう怖い…
あたしには天野君しかいないから、嫌われるのが怖くて今まで近付けなかったんだよ…
「…まじで?」
「……」
天野君の顔が見れない。
「…じゃ、付きあお」
え…?
いま、なんて言った…?
「…え、だめ?」
「だめじゃないっ…だめじゃないけど…」
固まっているわたしにクスっと笑い出す天野君。
「俺も江藤が気になってた。たぶんずっと前から」
「…へ…?」
「だから付きあお。そういうことじゃないの?」
「えっと…そういうことじゃなくない…けど…」
「じゃ決まりな」
天野君の屈託ない笑顔に、胸がはち切れそうになる