病み✕つき
第3章 距離
ざわ…ざわ…
ひとしきりざわついた後、一年生の男の子がステージに上がった。
『それでは愛の告白までー!?
3、2、1、ショータイム!!』
という司会の掛け声とともに一年生の女の子の名前を出して気持ちを述べる。
名前を呼ばれた女の子は周りの女子たちにはやしたてられて、照れながらステージに上がった。
『あさどうなる!?この恋の行方は!?お返事をどうぞっ!!』
「…お願いします」
『おおーーー!!カップル成立だーーー!!』
"おおおーー!!"
"ヒューヒュー!!"
その後も次々にカップルが成立していき、会場は今日一番の盛り上がりを見せた。
「天野ー!!お前なんか言いたいことないのかよーー!!」
「ねーよ!(笑)」
2組の男子たちが冗談交じりに天野君に絡んでいた。天野君は軽く受け流すように返す。
「へーー!?隣の可愛こちゃんに愛の告白しなくていいんですかー!?(笑)」
「バーカ(笑)」
「えーきっと天野様からの告白を健気に待ってるんだよねー!?かわいそー!!」
そう言ってクネクネと泣き真似をさながらわたしに視線を向ける男子たち。
「ぇっ!?あ、あの…っ」
「ちょっとお前ら!いい加減にしろって、そんなんじゃないから」
「いやん天野様!そんなに怒んないでー♡(笑)」
天野君が一言ピシャリと言い放った後、男子たちはふざけながら去っていった。
「…ごめん。あいつら失礼で」
ははっと軽く笑いながら謝る天野君。
あたしはなんだか居たたまれない気持ちになって、恥ずかしくて、天野君の顔が見れない。
そうだよね。
わたしと天野君はなんでもない。
そんな笑顔で流せちゃうくらい、天野君はあたしのことなんか、全然なんとも思ってないよね…
「全然気にしないよ!あ、あたしちょっとトイレ…!」
「江藤…っ?」
いつもしてるはずの作り笑いも上手くできてるか不安になって、このままじゃ泣いちゃいそうで、あたしは慌てて体育館を出た。