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病み✕つき

第6章 独占




「らいむ」



天野君の優しい声があたしの名前を呼ぶ

それはとても心地良くて、胸の奥がぎゅっとなる感覚がした



「もっかい言って…?」

「…らいむ…」



ずっとずっと大嫌いだったこの名前も、天野君が呼べば魔法の言葉みたいにキラキラして聞こえる

いつだって天野君だけが魔法をかけてくれる

あたしがあたしになれる魔法を




天野君を誰にも渡したくないのに、
天野君の中にはあたし以外の人がいるんだね




ゆうり先輩にはあたしの知らない天野君だって見せるのに
あたしには触ってもくれない




彼女になれても、やっぱりあたしばかり好きで

きっとあたしだけが好き…





「…ねぇ天野君。
もう一個お願いしてもいい…?」

「うん。なに?」

「…今日天野君のお家行ってもいい?」

「…ぇ…、別にいいけど…これから?」

「うん」



天野君はなんだか戸惑っているような反応で
不謹慎だけど、その顔がなんだか可愛いと思ってしまった




ーーーーー…




「お邪魔します…」

「あれ、母さんたち帰ってないのかな…
まーいいや。とりあえず俺の部屋2階だから、こっち」

「う、うん…!」



天野君の家はあたしの家から案外近くて、いかにも幸せな家族が住んでいそうな綺麗で家庭的な一軒家だった。



「ごめん汚くて。なんか飲み物持ってくるからその辺座ってて」



天野君は苦笑いを浮かべて1階のキッチンへ向かった。


部屋の中、天野君の匂い…


半ば強引に押しかけて来たものの、少し散らかった天野君の部屋に通されて、無条件に緊張してしまう。




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