君の隣の相棒さん、∥
第4章 暗闇。光は運命を変える。(S)
────夢を見た。何処まで行っても闇、闇、闇。
そこに一人いる自分。
前も後ろも、上も下も分からないその場所は彼女を恐怖へと陥れた。
声にならない叫びを上げたとき、それは突然彼女の目の前を照らした。
(───さん、───さん、
彼女を呼ぶ声。その声を探して走り手を伸ばすと見えたのは小さな一筋の光。
その光に触れた瞬間、視界が揺らぎ現実へと引き戻されていた。
『───はっ‥‥』
開かれた目。何処までも白い天井へと無意識に伸ばされた彼女の手には次の瞬間、優しさを感じる。
感じたことのある───それはあの暗闇の中の光に良く似ている温もりだった。
「───さん」
目が覚めたようですね、とその声。
心地好い声だった。何気なく握ったその手はもう片方の手で彼女を包み込む。
不意に優しい微笑み。釣られるように微笑む彼女と、その人を遠目から見詰める男の存在。
彼は二人を見て歯車が狂い出す音を一人、感じていた。
(暗闇。光は運命を変える。)
(彼女を変えたのは運命か、それとも必然か───)
(あの時の君は、もういない)