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黒の青空

第6章 4

「あの新人さん、仕事何も覚えてくれへんから呆れてまうわ。これで何回目かわからへん」


夕飯時

母さんが仕事の愚痴をこぼす

いつものことだ

でも俺にはよくわからないからほぼ聞き流し


「時期覚えてくれるやろ」


父さんがなだめるけど、母さんは気が済まない

いつものことだ

母さんの愚痴はやがて違う話になって父さんと笑うようになった

俺はテレビをつけてリモコンで番組表を開いた


「(あ、この後映画やるんや。部屋戻ってからみよ)」


番組表を閉じてニュースをつけた

新しい殺人事件や京都の紅葉が見頃だとか良いニュースと悪いニュースの差が激しい


「洋助、そう言えばあの子は?」


母さんが俺に唐突にそう聞いてきた

理緒のことだ


「…何もないみたい」
「最近ニュースも何も言わへんなったから捜すの難しいみたいやなぁ」
「うん」


家にいるけどね、って心の中で言った


「ごちそうさま」


俺は席を立った

母さんは特に反応しなかった

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