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片思い

第10章 固想い



富岡くん…見つけた…

富岡くんは図書室にいた。
本を読んでいる。



「ふぅー…、よし」

呼吸を整える。
今になって震えてくる。





でも…あたしから富岡くんを奪ったら
何が残るの?
切ないこの気持ちはどこに
おいておけばいいの?

好き。

この一言を言えなかった。
怖くて怖くて。
嫌われたくなくて。


言わなきゃ伝わらない。
知ってる。
でも伝わって欲しくないとも思ってた。
この気持ちを捨てなきゃならないぐらいなら
伝えずに終わった方がいい。
そぅ思ってた。


でも………


ちがった。


人はみんな恋をする。
その中で素直に気持ちを伝えられる
ことのできる人はいいけど
あたしみたいにできない人もいる。
逃げちゃうんだよね。
怖いんだよね。

私なんか…って思っちゃうよね…


でも、あたしはいくよ。

梨花には負けるかも知れない…
でもこれ以上へらへら笑えない。

怖いよ…
すごく怖い。


もしかしたら、
もしかしたら少しの行動でなにかが
変わるかもしれない。

弱虫の私は大嫌いなの。

これ以上あなたのことを黙って見てることなんてできない。


ガラガラ
扉を開ける。

富岡くんがこっちを見る。
でも、すぐに本に視線を戻す。

どきどき…
心臓がいっきに早く運動する。


顔が赤くなる。
勇気を振り絞る。

「富岡くん…あ、あのさ…」


富岡くんはこっちを再び見る。
言葉は何もない。


「………っ…あ、あのね…」


言葉が緊張で出てこない。
怖くて涙がでてきそうだ。

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