妖魔滅伝・団右衛門!
第6章 妖魔滅伝・嘉明!
京での滞在は、八千代が悠久と秀吉に声を掛けられた事以外は平穏であった。元々京は、退魔師も秀吉の影響力も強い土地。妖魔や賊がはびこるような環境ではない。油断はなくとも、皆心のどこかには安心感を抱いていた。
「そういえば、今回も八千代は清正と会えなかったな」
「清正様って、あの猫又……虎を手懐けた方でしょう? ぼく、ちょっと怖いです」
「怖くない怖くない、武士らしい精悍ないい男だぞ? それに清正と仲良くなったら、トラとも和解出来るかもしれねぇじゃねぇか」
「和解しなくていいです。怖いですもん……」
「武士がそんな弱気でどうする。勇気を出して、戦わないと――」
町から出て、人の往来も少なくなったその時、団右衛門の網に何かが掛かる。しかしそれは掛かった時点で、既に手遅れだった。
足を地面に付けた瞬間、そこから黒い渦が吹き出す。それは団右衛門や八千代、そして近くにいた家臣数人を巻き込み、結界となって皆を閉じ込めた。
「しまっ――」
黒い渦は石壁のように固まり、蟻一匹通さない程強固に阻む。これを破り脱出するには、時間が掛かりそうだった。