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　しかし真に焦らせるのは、閉じこめられた事実ではない。団右衛門が分断された瞬間、外から大勢の妖魔の気配が流れてきたのだ。外にいる嘉明の身を守る事も、今の団右衛門には難しい。

　さらに事態は悪化する。あまり広いとは言えないその空間に、一匹の禍々しく長い影――とぐろを巻いた大蛇が、姿を現したのだ。

　巻き込まれた者達は、大蛇の鋭い瞳に怯えた声を上げる。だが団右衛門は、一人笑い声を上げた。

「だ、団さん……？」

　八千代が恐る恐る顔を覗き込むと、団右衛門は八千代の肩を叩き、怯える家臣達を指差す。

「八千代はあいつらと、端に寄って身を守れ」

「え？　でも、団さんは」

「分かりやすくていいじゃねぇか。ここを出るには、あの蛇を倒せって事だろ。余計な術はいらねぇ、力と力で決着付けてやるぜ！」

　団右衛門は清正から借りた破邪の刀を抜き、目を爛々と輝かせる。戦を好み、進んで前に行くその姿勢は武士のもの。怯んでしまった者に、出る幕はなかった。

「団さん……御武運を」

　八千代は邪魔にならないよう下がり、両手を握って祈る。正しきものの、勝利を。