妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
降り注ぐ日の光は温かく、果てなく広がる菜の花畑は爽やかな風に吹かれてそよいでいる。京の町に、このような場所はない。嘉明はすぐに夢だと気付くが、夢から覚める気配はなかった。
嘉明はのどかな世界に眠気を覚え、夢の中なのに寝転がりまた深く眠ろうとする。だが目を閉じたその時、覆い被さる気配に気付き眠気は吹き飛んだ。
頭の中に過ぎるのは、嫌と言うほど繰り返した淫夢。しかし目を開けると、そこにいたのは団右衛門だった。
「……なんだ、お前か」
団右衛門は優しい眼差しを嘉明に向け、口付ける。夜中の一件をここまで気にしていたのかと自分の深層心理に驚きながらも、嘉明は現実のように熱を持つ口付けへ夢中になった。
どうせ、夢であるのは分かっている。少し甘えても、欲に浸っても、誰に知られる訳ではない。嘉明は団右衛門の背に手を回すと、享楽の寄る辺のように縋った。
交わる唇の感触が現実と変わらないのは、それだけ体が団右衛門を覚えた証である。嘉明は自ら帯を緩めながら、団右衛門に訊ねた。
「なあ、団。お前は退魔師の精が鬼を近付けないと言ったな。しかし八代は私を構わず犯そうとした。騙して抱いているのだとも話していた。本当に、退魔師の精に効果はあるのか?」