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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 布団の上に下ろした嘉明は、充足感と団右衛門の腕の温もりのせいか、既に眠りについていた。団右衛門の中で、起こしてもう一度溶けるまでまぐわいたい気持ちと、幸せな睡眠を見守りたい気持ちが葛藤を起こす。

「よしあ――」

 声を掛けようとして、団右衛門は気付く。布団に残る、微かな鬼の気配に。

(淫夢の跡、か。もしかして、だからこんな夜中にフラフラ出ていたのか?)

 団右衛門は布団の気配を手で払い、嘉明を寝かせる。そして添い寝すると、悪い夢から守るように抱き締めた。

「今度は、いい夢見ろよ」

 静かに過ぎていく夜も、いずれ朝になる。しかし新しい一日が、必ずしも清々しいとは限らない。少しでも長く夜が続く事を祈り、団右衛門も眠りについた。

 そして空が朝日がまだ昇り切らない内に、団右衛門は布団を抜け出し部屋を出る。

「一二三、出てこい」

 団右衛門が天井に向かい呼び掛けると、天井の木材から黄金の雫が零れ落ち、それが人の形に変わる。現れた青年の一二三は、穏やかな笑みを浮かべ団右衛門の肩を叩いた。

「見ましたよ、団さんの大事な方は、お綺麗な方で。お熱いですね」

「うっさい! いいか、オレは今から出掛けるから、嘉明が襲われないように見張ってるんだぞ! 今からが正念場なんだからな」

「ははは、照れ隠しですね。羨ましいなあ」

 団右衛門は顔を赤く染めながら、一二三の顔を掴む。それでも一二三は笑みを絶やさず、嘉明の部屋に入っていった。

 団右衛門は掴み所のない一二三に溜め息を吐きながらも、前へ進み始める。太陽は時を待たず、昇ろうと迫っていた。



つづく


 

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