妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
八千代は、今日の朝から正式に小姓として復帰する予定となっていた。そのため一段と早起きして準備していたが、それは団右衛門の訪問で遮られる事となった。
「……戻ってきたんですね、団さん」
八千代は団右衛門を迎え入れ茶を出すが、その瞳には不信を映している。嘉明の家臣ならば、それは当然の反応である。団右衛門は刺さる視線に気付かないふりをして、出された茶に口を付けた。
「ああ、ちょっと調べたい事があって出たんだが、それも済んだんでな」
「調べたい事? それならどうして、嘉明様に何も言わず出て行ったんですか。団さんのした事は、謀反と同じ事ですよ!?」
「まあ落ち着けよ八千代。オレの事はいいんだ、今日はあんたに話があるんだよ」
団右衛門は茶を置くと、まだ不信を取り払っていない八千代を見つめる。やけに真剣な面持ちに、八千代は言葉を失い、正座する膝の上に乗せた拳を握った。
「嘉明を狙う鬼の足取りを、掴んだんだ」
「え……」
「奴は五十年前、悠久が故郷だって言ってた村を襲った。そして退魔師に破れて、東に逃げたんだ」