妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「そ……それをぼくに話してなんの意味があるんですか? 嘉明様をお守りするのに、鬼の足取りなんてどうでもいいでしょう」
「まあ聞けって。逃げた鬼は、何十年もの間力を蓄えて、二年前また村を襲った。そして退魔師を殺して、復讐を果たしたんだ。それから淡路に流れてきて、嘉明を見つけたらしい」
八千代は息を飲み、汗を垂らしながら団右衛門の言葉を待つ。団右衛門はうつむき、頭をかきむしりながら口を開いた。
「つまり、悠久の話は嘘だったって事だ。そもそも、あいつは初めから嘘を吐いていたんだよ。覚えてないか八千代? あいつは初めてあんたの顔を見た時、『この小姓は自分の弟だ』って主張したよな」
「は、はい……」
「なんであいつは、八千代が小姓として仕えていると知ってたんだ? 嘉明の手勢にいたんだ、嘉明の配下である事は見れば分かるさ。けれど小姓かどうかなんて、判断出来るはずがない。あいつはあの時既に、八千代を知っていたんだ」
団右衛門はかきむしる手を止めると、その手をぼんやりと眺める。
「あいつは、八千代の兄貴じゃなかったんだ」