妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「殿は……そんな事を求めるお方ではない。いや、仮にそうだとしても……それが仕事なら、黙々とこなすべきでしょう」
下世話な話題に不愉快な表情を浮かべながらも、頭の中で想像したのか顔は赤い。話題に慣れていない事も、易々と見抜かれてしまう態度だった。
「なるほど……面白い人間だ。退魔師さえいなければ、共に連れ去り玩具にしてもいいのだがな」
「何を言っているんですか。意味が分かりません」
「清い者は惹かれあい、美しき絆を結ぶ……か。まあ、少し味見するくらいの時間はあるか。その初な精も、魂と共に頂くとしよう」
掴んだ太助の腕をひねり、悠久は太助を土の上に倒す。そして太助が余計な真似を始める前に口を塞ぎ、体を麻痺させ、同時に高ぶらせる毒液を飲み込ませた。
「っ、ぁ――」
着物の下に隠れた体は筋肉だけでなく、まだ若く柔らかな肉がうっすらとついている。鬼に毒され、変質した肌とは違う生きた感触に、悠久は牙を向き鋭い爪を立てた。
太助は混濁する意識の中、馬達に目を向ける。馬は鬼と化した目の前の男の妖術か、皆眠らされている。しかし怪我はなく、無事のようだった。