妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
魂がそこにない以上、目の前で対峙する八千代は死体と同じである。鬼に魂を取られた時点で、八千代の人生は幕を下ろしてしまったのだ。
「俺が八千代のためにしてやれる事なんざ、もうたった一つしかねぇ。肉体も、鬼に捕らわれた魂も綺麗に浄土へ葬って、来世への道を示してやる事だけだ!」
団右衛門は叫ぶと同時に、足を踏み込み八千代の心臓目掛けて刀を突き刺す。迷いのない鋭い刃は、浄化の光を放ちながら八千代の体を貫いた。
『がっ……ごふっ!』
「待ってろ八千代。すぐに魂も送って、正しい道に返してやる」
刀を抜くと、八千代は青い血の海に倒れる。浄化の力で邪気を断ち切った今、邪気の器でしかなかった体が再び動き出す事はない。しかし、傷付き倒れる姿は、団右衛門の心を抉った。
「団ちゃん……」
一二三は団右衛門に近づき、着物の裾を引く。不安そうな瞳は、感傷に浸る暇はないと団右衛門を鼓舞させた。
「すぐ行く。鬼を……許す訳にはいかねぇからな」
「うん、お願い――っあ!?」
すると一二三は突然苦痛の悲鳴を上げて、頭を押さえてしゃがみ込む。
「どうした、一二三!?」