妖魔滅伝・団右衛門!
第9章 最終決戦・団右衛門!
光すら届かない深海に、嘉明は身を任せ沈んでいた。誘う水の音が耳を塞ぎ、底無しに海は続いていた。肺から空気は抜けきっているが、苦しくはない。思考を止め抗わずにいると、沈んでいるのか浮かんでいるのすら分からないほど楽だった。
だが、海のさざ波に泣き声が混じる。その声は、嘉明の拡散する意識に明かりを灯した。
「――八千代?」
目を開けば、嘉明よりずっと上、もはや遠く離れてしまった水面に、泣きじゃくる八千代が見える。嘉明は両腕を伸ばすと、水を掻き水面へと上ろうとした。
しかし意識を取り戻すと、息苦しさを覚えてしまう。体の重さはなかなか嘉明を上に進ませず、暗い海は全身に纏わりついた。
「八千代!」
嘉明がもがいたその時、小さな光が嘉明の周りを囲んだ。その光に導かれるように腕に力を込めると、体は一気に浮上する。嘉明は水面から顔を出すと、波打ち際で膝を抱え泣き続ける八千代の元へ急いだ。
「八千代、どうして泣いている? あまり自己卑下をするのは良くないぞ」
「嘉明様……」
八千代はびしょ濡れになりながらやってきた嘉明に、力一杯抱きつく。