妖魔滅伝・団右衛門!
第9章 最終決戦・団右衛門!
死して八千代が背負うのは、嘉明のために死んだという小姓の名ではない。真意がどうであろうと、八千代は人を殺し心臓を食らった鬼である。嘉明個人の感情がどうであろうと、加藤家の家臣として名を残す訳にはいかなかった。
「恨みを鎮めるため、廃寺のあったあの場所に鬼塚を建立する。お前が寝ている間に、皆と話をしたんだが――そのような事情では、八千代もそこに葬る事になるな」
「……すまない」
「なぜお前が謝る? 全ては私の至らなさが起こした事件だ。お前に私を責める権利があっても、謝る理由はないぞ」
「違う、あんたのせいじゃない! 鬼からあんたを守りきれなかったのも、八千代を突き落としたのも、全部――」
すると嘉明は、身を乗り出し団右衛門の頬を押さえ、口付けて言葉を遮る。虚を突かれた団右衛門が固まると、嘉明は乾いた笑みを浮かべた。
「この身を許すのはお前だけだと言ったのに、それも反古にしてしまったな。すまなかった」
嘉明はそう言い残すと、一人で部屋から出て行ってしまう。団右衛門はしばらく固まったままだったが、やがてその場に伏せると、ぼろぼろと涙を零した。
「なんであんたはっ……いつもそうやって!」