妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
「冗談じゃないぜ……いくら精が極上でも、ここまで強化出来るもんなのかよ」
団右衛門が下手に傷付ければ、何度でも八代は嘉明を使い傷を癒し、力を増幅させるだろう。そしてここで嘉明を奪われれば、早かれ遅かれ八代は嘉明を貪り妖力を蓄える。強化に強化を重ねた鬼がどうなるか。それは想像に容易い。
(これは、可哀想だが鬼の力の源を……嘉明を殺した方が早いな。世の平和のためだ、あいつも恨みはしないだろ)
団右衛門がさして悩まず結論を出したその時、八代の背中に深い衝撃が走る。団右衛門はまだ何もしていないのに、八代は苦痛の叫びを上げたのだ。
「ぐ……おおーっ!」
よくよく見ると、団右衛門には見覚えのない少年――八千代が八代の背に脇差しを突き立てていた。少年は泣きそうな顔をしているが、容赦なく脇差しを捻って八代を傷付けた。
「嘉明様を離せ、化け物っ!」
「ぐっ、八千代……っ!」
八代は大振りな拳で八千代を殴り飛ばし、突き刺さる脇差しを抜こうとする。その一瞬の隙を、団右衛門は見逃さなかった。
一瞬で間合いを詰め、嘉明の腕を取ると八代を引き剥がすように蹴り倒す。