妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
「悪いな、こいつは返してもらうぜ!」
団右衛門は嘉明を抱えると、躊躇いなく外への扉に向かって走り出す。そして後ろを振り返らず、八千代に呼び掛けた。
「あんたも早く来い、ここは封鎖するぞ!」
八代は激昂するが、団右衛門や小柄な八千代の速さには敵わなかった。ようやく外へと飛び出し、八千代の無事も目尻で確認すると、団右衛門は扉を足で閉じ、懐から札を出して貼り付けた。
「こんなもの貼ったところで、三日と持たねぇな。とにかく城まで戻るぞ、あんたも来い」
団右衛門も八千代も互いに面識はないが、嘉明を救おうとしているだから味方だろうと結論を出し、共に駆け出す。辺りはもうすっかり暗く、明かりがなければ歩く事すら難しい。だが地鳴りが響く廃寺を背に、ひたすら団右衛門と八千代は走った。
嘉明が、鬼に狙われている。とんでもない姿で帰還した事や、共に廃寺へ赴き、行方の分からなくなった部下達の存在から、危機は隠そうとしても城内の一部には漏れ伝わってしまった。そしてそれを救ったのが団右衛門だと知られると、団右衛門を客分として迎え入れる事を拒む者はいなくなる。
団右衛門の鬼退治。それが長い戦いの始まりである事は、団右衛門も知らなかった。
つづく