妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
嘉明は目を閉じたまま、小さく頷く。しかし嘉明は、八千代のために散々無茶を働いた男だ。いつまた騒ぎ出すかは分からない。団右衛門は早く残りの武士も見つけようと、色欲だらけの頭を退魔師に切り替えた。
「八千代も呼んで、一度初めから状況を整理しよう。ちょっと八千代を呼んでくるから、待っててくれ」
団右衛門は嘉明にそう言い残すと、立ち上がり部屋を出ていく。廊下から外を眺めれば、もう夕刻だ。ならば八千代は炊事場で手伝いをしているだろうと踏み、団右衛門は足を進めた。
「あ、団さん! ちょうど良かった、今、夕飯を持ってこようと思っていたんです。嘉明様の具合はどうですか?」
案の定炊事場にいた八千代は、屈託のない明るい笑みで団右衛門を迎える。だが団右衛門は、八千代の周りに漂う気配に目を丸くした。
「あんた、大丈夫か!? なんだこれ、退魔の札があるのに、なんでこんな邪気が溢れてんだ?」
八千代を飲み込もうと地から影が絡み、纏わりついて離れない。だが八千代はその気配までは分からないのか、焦る団右衛門の姿に首を傾げた。